趣 旨
 村上の町屋は外観こそ近代化の波を受けて魅力を欠いているが、内部構造はかつての町屋の形態を保持している所が多く、日本ナショナルトラストの学術的調査でも歴史的建造物が数多く残る貴重な歴史の町と高い評価を受けた。外観整備を歴史的考証に従い行うことで、城下町としての魅力あふれる町並みへと変貌することは必至で、これにより交流人口の増加、また市民が誇れる町がよみがえることと確信する。そこでこの町を市民自らの力で良くしていこうという志のもとこのプロジェクトを立ち上げた。市民基金を設立し年間1千万円(10年間で1億円)の寄付を募り、町屋の外観再生に補助金を出し、町屋の再生を行っていく。これにより城下町として個性にあふれ、お祭(オシャギリ屋台)が似合う歴史的な町を再生する。


背 景
 村上は新潟で一番古い城下町といわれ観光資源のみならず文化性の高い町ながら、その良さを活かしきれてはおらず、また中心市街地は衰退の道をたどっていた。しかし6年前(平成10年)我々市民が立ち上がり歴史を活かした町おこしを開始、第一弾として生活の空間である「町屋の公開」を行ったことが町に変化を生み出した。町屋を舞台にした「町屋の人形さま巡り」や「町屋の屏風まつり」を始め、「竹灯篭まつり」など市民の自力による様々な催しが行われるようになり、新たに年間12万人もの観光客が旧城下町に来るようになった。眠っていた町の良さに光を当てたことにより、町は活気を取り戻してきており、また市民にも町への誇りが生まれてきた。
この流れを受けて市民自らの手で昔ながらの黒塀を復活させようという「黒塀プロジェクト」が立ち上がり、現在150mができ上がった。更に(財)日本ナショナルトラストの町屋を中心とする旧町人町の調査を依頼、学術的調査が行われ村上は歴史的建造物の多く残る非常に貴重な町だとの高い評価を受けた。「村上町屋商人会」「城下町まちなみの会」「チーム黒塀プロジェクト」など我々市民団体による努力が相互に結びつき城下町としての魅力がアピールされ町が復活する兆しがでてきた。


町屋の外観再生プロジェクト
 町屋の中で家伝の人形、屏風を披露し市民の心意気で村上は「町屋の城下町」というイメージが定着したばかりでなく、地元村上の人とふれあいがもてる町としても評判が高まった。生活の空間である町屋に入ってもらってのふれあいであり、歴史の町としてソフトの面では他の町にはない素晴しさが村上にはある。建物の中に入ると昔ながらの構造〔大黒柱に松の梁、仏間に神棚、囲炉裏、箱階段など〕で歴史を感じさせる村上でも、町屋の外観はシャッターやサッシ、トタンなど近代化の洗礼を受けせっかくの魅力を殺している状態。もし外観が格子窓や下見板(木製外壁)、木製ガラス戸などで村上らしい町並みを再生すれば外観と内観が調和しソフト、ハードの両面の魅力を兼ね備えた町となる。新潟はもちろん日本を代表する歴史的魅力を持つ町となりうる。
そのためには町並みの再生整備がカギとなる。そこで町屋の外観再生基金をつくりこれを実現したいと考える。市民の寄付を募り、年間1千万円(10年間で1億円)の基金を作り、町屋の外観再生のための補助制度をつくる。これにより町屋の外観整備を進め、お祭が似合い、美しい歴史的城下町の再生を実現しようというものである。我が町は市民自らの力で良くしていこうという志のもと町並みを整備する、村上市民のまちづくりへの挑戦である。


町屋の外観再生 事業内容

町屋の外観再生
 サッシやトタン、アーケードなどで近代化された町屋の外観を、格子窓や下見板などの木の外壁、木製のガラス戸などの昔ながらの町屋の形に再生することにより風格のある町並みを作る事業である。外観だけなので低経費ですみ、一方町並みの趣きは大きく変わることがポイント。できるだけ歴史的考証に則った村上らしい再生を行うことを基本とし、(財)日本ナショナルトラストの調査をベースにして再生計画を立てる。但しその町屋が村上らしい魅力的な外観にするための再生でもあり、全く昔と同じ形にしなければならないというものではない。村上に無い形の意匠は避けたい。


村上大工 匠の会の結成(本事業の再生を実践する大工有志の会の結成) 
 村上の大工は古くから「村上大工」と呼ばれ、技術の高さを他県にまで轟かせていた。しかし近年、建築スタイルの変化と共に伝統技術を使う機会が激減し、その技術の伝承が危ぶまれるようになってしまった。栄光ある村上大工の復活が求められる昨今、この事業を行うことにより伝統の技を活かせる新規の機会を作り出す。これを実行する「村上大工 匠の会」をつくり、町屋再生を実際に行ってもらう。一般の大工に依頼するのと違う利点は、技術面ではもちろんだが、市民による町作りという意味合いの中で、普通より低料金で再生できる制度をつくることにある。一方、再生の事業によりこれまで無かった需要が生まれる。低料金の設定で利用者には喜ばれ、村上大工 匠の会にとっても伝統の技を使う仕事が増える。本プロジェクトチームと村上大工の連携があって初めて、より良い形で町屋が再生されていく。(使用する木材は県産材を中心に使い、県産材の利用促進にもつなげる機会ともしたい。)


サッシ 格子
トタン 村上らしい外壁
アーケード 漆喰壁
新建材の外壁 木製ガラス戸(町屋再生Pオリジナル防火タイプ)
シャッター のれん
ブロック塀 黒塀

事業予算 ----- 1億円(10年間)
年間予算 ----- 1000万円(会費・寄付金・その他の収入による)
補助金額 ----- 外観再生補助金 上限80万円 (費用の60%の補助)
対象地域 ----- 村上市 旧町人町地区(大通りに面した地区を重点的に)
年間再生軒数 ----- 年間予算に応じて決定するが10軒から15軒ほどを予定
対象物 ----- 町屋、塀、など外観を構成するもの